第七回 産科医療特別給付金事業についてのお知らせ!!

申請中の親子

【産科医療特別給付金事業】が、始まっています。まだ、御存じでないご家族もいらっしゃると思います。このコラムでは事業の内容をお知らせしますので給付金を受け取ることができる可能性のあるお子さんがいらっしゃるご家庭は忘れないように申請してください。

産科医療補償制度の検証から生まれた産科医療特別給付金事業

 産科医療補償制度は、2009年1月1日から始まりました。その際、補償の対象を決めるために2021年までは個別審査が行われていましたが、2022年以降この個別審査は中止されました。

 2009年~2021年に生まれ、産科医療補償制度の個別審査で補償の対象外と判定されたお子さんは、再申請によって給付金を受けとることができる可能性があります。これが産科医療特別給付金事業で、申請できる期間は2025年1月10日から2029年12月31日までの5年間です。この期間を過ぎると給付金を受け取ることができなくなります。

産科医療補償制度とは?=産科医療補償制度成立の経緯と目的

 お産には時に予期しない危険が伴います。お産に関わる医療事故では医療者側に過失があったかどうかを判断するのが困難なことが多く、過失の有無が裁判で争われることになります。

 産科医は分娩などで多くの時間を拘束されるだけでなく、お産に関する訴訟が多いことなどによって、産科を志す医師が減り、その結果、分娩を取り扱う医療施設が少なくなり安心して子どもを産むことができない地域が生じています。

 このような産科医不足の要因の一つとなっている医療訴訟を早期に解決するために、2009年1月1日から公益財団法人日本医療機能評価機構が運営組織となり、我が国で初めての無過失補償制度として産科医療補償制度が設立されました。

 この制度は分娩に関連した重度の脳性麻痺児とその家族の経済的負担を速やかに補償するとともに、脳性麻痺発症の原因分析と再発防止に役立つ情報を提供することよって安心して産科医療を受けられる環境整備をすることが目的です(第四十四回 産科医療補償制度(1)を参照ください)。

 財源は、出産時に医療保険から加入者へ支払われる出産育児一時金の一部を掛け金としてプールしたもので、「分娩に関連して発症した重度の脳性麻痺」の患者・家族に対し「1人当たり3000万円」(一時金600万円、分割金2400万円(年間120万円×20年))の補償を行うものです。

第7回産科医療特別給付金事業についてのお知らせ|産科医療補償制度の目的

産科医療補償制度:補償対象と個別審査

 補償の対象となるのは制度ができた2009年1月1日以降に出生した赤ちゃんで、先天性の異常や新生児期に起こった病気などの要因によらない脳性麻痺を認め、身体障害者手帳1・2級相当にあたる場合に補償対象となります。

 産科医療補償制度は、2015年1月に補償対象となる在胎週数や出生体重の基準の見直しが行われましたので、産まれた年によって、補償対象となる在胎週数や出生体重の基準が異なっています。

 2021年までは個々の子どもについて、胎児心拍数モニター記録などで「低酸素状態」があったことを示す所定要件を満たすことが必要とされ、その評価のための個別審査が行われていました。

 一方、この個別審査に関しては以前から多くの問題が指摘されており、2022年1月に個別審査が廃止される以前に個別審査で対象外とされたケースを分析した結果、その大半が「分娩に関連して発症した脳性麻痺」であり、本来であれば補償の対象であったということが後になって判明したのです。

 そのため、この個別審査は2022年1月から廃止され、重度の脳性麻痺の場合には、「出生時に生じた」と見做して、「在胎週数28週以上」の赤ちゃんすべてを補償対象とすることになりました。

第7回産科医療特別給付金事業についてのお知らせ|産科医療制度の補償対象児

制度改正の前後で生まれた大きな差と産科医療特別給付事業

 2021年12月31日までに産まれ、産科医療補償制度の個別審査の結果、「補償対象とならない」と判断された子どもの家族が「2022年1月以降の新しい基準で判断してほしい」との強い要望を国に行い、公益財団法人日本医療機能評価機構は産科医療特別給付事業を開始し2025年1月10日より専用サイトにて、給付申請を始めました。(https://www.sanka-kyufu.jcqhc.or.jp/

 産科医療特別給付事業は2009年から2021年に出生し、脳性麻痺になり申請を行なったにもかかわらず産科医療補償制度の個別審査によって補償が受けられなかった人はもちろん、同期間に出生し補償制度の対象基準を満たしていたものの、何らかの理由で申請を行わなかった人やできなかった人が給付申請の対象になります。

 厚労省の調べでは、特別救済の対象者は「1627名(847-2680名)」、最大で約350億円(2680人×1,200万円+事務経費約25億円)の財源が必要となると推計されています。この財源は補償に当てられず積み立てられている保険料が活用されます。

第7回産科医療特別給付金事業についてのお知らせ|産科医療特別給付金の対象児の3条件

給付申請に必要な書類

 書類には、①ご家族が作成準備する書類が6種類、②お産をした病院から取り寄せる書類が4種類、③専門の医師に作成を依頼する書類が1種類あります。過去に申請を行なったことがある人は一部の書類が不要です。また、診療録等の写しの提出に関する同意書を分娩機関に提出すれば、緑の封筒に入っている分娩機関からの書類は分娩機関から運営組織へ直接送付を依頼できます。

 特別給付金の支払いにおいては、保護者がそれまでに裁判や示談によって分娩機関から損害賠償金を受け取っている場合、産科医療補償制度と同じく調整が行われます。すでに1200万円以上の損害賠償金を受け取っている場合は給付の対象外となります。また、1200万円以下の場合はその差額が支払われることになります。損害賠償請求を行って賠償金を受け取っていないか確認する必要があり、損害賠償請求に関する情報提供の同意書が必要となります。

 特別給付金の申請期間は2025年1月10日から2029年12月31日までの5年間となっており、この期間を過ぎると申請ができません。専門の医師に作成を依頼する診断書は入手に時間がかかることも多いため余裕を持った準備が必要です。

第7回産科医療特別給付金事業についてのお知らせ|給付申請書類

産科医療特別給付申請手続きの流れ

給付申請に必要な書類や具体的な書類や書類の記入方法、及び手続きについては、公益財団法人 日本医療機能評価機構から出ている「産科医療特別給付事業給付申請ハンドブック」に詳しく説明が書かれています。インターネットでダウンロードできますのでぜひ参照してください。

➀給付申請書類の提出

給付申請に必要な書類は産科医療特別給付事業のホームページから取り寄せることができます。書類には、①ご家族が作成準備する書類、②お産をした病院から取り寄せる書類、③専門の医師に作成を依頼する書類の3種類があります。すべてそろえて、運営組織(公益財団法人 日本医療機能評価機構)に提出します。書類は返却されないので必ずコピーをとって提出してください。

②申請受理

 提出された書類に不備がなければ、すべての書類が届いた日から60日以内に「受理通知書」が送られてきます。同時に運営組織は保護者がそれまでにお産をした病院から裁判や示談によって損害賠償金を受け取っていないかの確認をします。

③審査・審査結果通知の送付

 提出された書類をもとに運営組織で給付の可否について審査を行い「審査結果通知書」が送られてきます。審査結果通知書は受理通知書の送付日の翌日から原則として120日以内に送付されます。

④特別給付金の申請、受取り

給付の対象になったら、必要な書類を添えて申請し給付金(一括で1200万円)を受け取ります。

第7回産科医療特別給付金事業についてのお知らせ|産科医療特別給付金申請の流れ

 障害を持つお子さんを育てていくことは、精神的・体力的に大変で、経済的な負担も重くのしかかってきます。2022年に制度が改正される前に行われていた個別審査によって補償の対象外とされたご家族の救済を求める粘り強い交渉によってこの産科医療特別給付金事業は生まれました。しかし、1200万円という給付金は本来受け取ることのできたはずの3000万円との間に大きな差があり、これは埋められていません。

さいごに

 以前の個別審査で補償を受けることができなかったご家族の情報を日本医療機能評価機構は把握しているのではないかと思います。本来であれば、新しい制度で給付金を受け取れる事業が始まるのであれば、国の方から個別にアナウンスがあって良いはずではないかと私は思いますが、日本医療機能評価機構からお知らせがくることはありません。

 したがって家族は自分で申請することになりますが、申請主義を頼ってだけでは、この事業の情報を知らないために救済から漏れる家族も出てきます。国から対象者に個別に情報を知らせる工夫が必要ではないかと思います。

 補償申請期限は2029年12月31日までです。それ以降は申請ができなくなります。忘れないでくださいね。また、あなたの周りにいらっしゃる2009年~2021年生まれの脳性麻痺のお子さんで、対象かもしれないと思われた場合には、声をかけてみてあげてください。

ではまた。 By ばぁばみちこ