第五回 ヤングケアラー➀ 歴史、実態調査

ヤングケアラーとは、本来は大人が行うはずの介護や家事を自分の役割として担っている18歳未満の子どもを表す言葉です。障害を持つ兄弟姉妹がいるきょうだい児や家庭の中で介護が必要な親やお年寄りなどと生活している場合、自分で自覚していなくても時としてヤングケアラーになってしまうことがあります。
ヤングケアラーの存在はいつ頃から認識されるようになったのでしょうか?
イギリスはヤングケアラー支援における先進国で1980年代末頃からヤングケアラーに関する調査や支援が行われてきました。「ケアラー法」が制定された1995年以降、介護者の権利を守るための様々なサービスが整備され、これが日本にも影響を与えました。
日本では2000年頃からヤングケアラーの存在が認識されるようになり、 2013年に日本ケアラー連盟が設立され、ケアを行っている当事者の声が少しずつ反映されようになってきました。
ヤングケアラーとは?
支援の対象となるヤングケアラーの年齢は国によって異なりますが、2023年4月に発足したこども家庭庁は、「本来は大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている18歳未満の子ども」をヤングケアラーとし、多くは障害や病気をもつきょうだい、親や祖父母と一緒に暮らしています。
子どもができる範囲で、家族のために家事などの手伝いをすることはとても良いことで、子どもは家族から感謝される喜びを知り、家族の絆が強くなります。しかし、ヤングケアラーが担っている家事や家族の世話は、それを行うことによって子ども自身がやりたいことができないなど学業や友人関係、さらに健康などに影響が出てしまうような子どもができる範囲を超えたものです。
ヤングケアラーが行っている家事や家族の世話は多岐にわたりますが、一般に多いのは、食事の準備や掃除、洗濯といった家事、きょうだいの世話だけでなく、目の離せない家族の見守りや励ましなどの感情面にまでわたるサポートも含まれます。

わが国におけるヤングケアラーの実態に関する調査研究
年齢に見合わない責任や負担を日常的に行っているヤングケアラーは、本来社会が保障すべき成長に欠かせない教育や子供らしさといった権利が守られていない可能性があります。
一方、世話を担っている子ども達は家族のために当然行うべき義務であると感じ、本人や家族に自覚がないまま本来なら何らかの支援が必要である場合であっても、家庭内のプライベートな問題と考えてしまう可能性があります。
厚生労働省は令和2年度に中学2年生・高校2年生を、令和3年度に小学6年生・大学3年生を対象にヤングケアラーの実態調査を行いました。
また、同時に令和2年度には学校の実情とヤングケアラーに対する取り組み、令和3年度には国民のヤングケアラーについての意識調査を行っています。
令和2年度 学校の実態調査と中学生・高校生実態調査
令和2年12月21日から、全国から無作為に選んだ中学校と高等学校について学校内のヤングケアラーについての実態調査を行い、同時に調査を行った学校に通っている中学2年生と高校2年生に対してWebによるアンケート調査を行いました。

令和3年度 小学生・大学生実態調査、一般国民のヤングケアラーの認知度調査
令和3年度には、小学生と大学生に対して実態調査が行われました。
無作為に選んだ全国の小学校350 校に令和4年1月から調査票を郵送し、小学6年生の児童に対してヤングケアラーのアンケート調査を行っています。また大学生への調査は、対象大学を無作為に選び、令和3年12月16日から大学3年生を対象にWeb 上での調査を行いました。
また、一般国民に対して、ヤングケアラーの認知度や意識を確認するために、Web によるアンケート調査を実施しました。日本全国の20代~70代の男女を対象に各年代でそれぞれ400人、計2,400人の回答が得られています。

ヤングケアラーの実態調査結果
家庭内に世話が必要な家族がいる割合
「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」によれば、小学6年生の6.5%(約15人に1人)、中学2年生の 5.7%(約17人に1 人)、全日制高校2年生の4.1%(約24人に 1 人)が「世話が必要な家族がいる」と回答し、1学級につき1~2人のヤングケアラーがいる可能性があります。

世話が必要な家族
小学生、中学生、高校生は「きょうだい」の世話が最も多く、次いで父母、大学生では母親の世話が最も多く、きょうだいの割合は減少しています。
<小学生への調査>
小学生が世話をしている家族はきょうだいが71.0%と最も多く、次いで母親でした。
きょうだいの世話が必要な理由は「幼い」が73.9%ですが、8.5%の子どもが世話をしている理由が「わからない」と答えています。また、世話が必要な父母の状態については「わからない」と答えた小学生が33.3%と最も多く、父母に病気や障害があっても子ども自身状況がよく分らないまま世話をしている可能性があります。
また、家族の世話を就学前から行っている子どもが17.3%、低学年から行っている子どもが30.9%見られました。
<中学生・高校生への調査>
中高生が世話をしている家族はきょうだいが最も多く、きょうだいの世話が必要な理由については、「幼い」に次いで「知的障害」となっています。
また、世話が必要な父母の状態について、「身体障害」が最も多く、次いで疑い含む「精神疾患、依存症」があげられています。
<大学生への調査>
大学生では、世話をしている家族は母親が最も多く、世話が必要な状態について「精神疾患」の割合が最も高く、感情面のサポートが必要になってきます。また、きょうだいの世話が続いている場合は知的障害、身体障害等の割合が高く、医療的ケアが必要な状況が多くなると思われます。

世話を行っている頻度と費やす時間
家族の世話を行っている頻度は「ほぼ毎日」が最も多く、小学6年生52.9%、中学2年生45.1%、全日制高校2年生47.6%とほぼ半数の子どもが毎日家族の世話を行っています。
また、1日7時間以上世話を行っている子どもは、小学6年生7.1%、中学2年生11.6%、全日制高校2年生10.7%で、1割程度の子どもが7時間以上世話を行っています。世話に費やす平均時間は、平日小学6年生で2.9時間、中学2年生で4.0時間、全日制高校2年生で3.8時間と報告されています。


世話を行っていることによる健康や生活上の影響(小学生)
世話を行っていることによる健康や生活上の影響について「特にない」と答えた小学生は約39.9%で、世話を行ってない小学生の62.4%に比べ少なく、健康や学校生活、友人関係などに何らかの影響を受けていると思われます。世話をしている家族が「いる」場合、「いない」場合に比べてどの調査項目でも回答率が高くなっており、特に、「健康状態がよくない・あまりよくない」との健康上の問題や「宿題ができていないことが多い」「遅刻や早退をする」「学校では一人で過ごすことが多い」などの学校での不利益の項目では2倍以上になっています。

世話による健康や生活上の影響(中高生)
世話をしている家族がいる中高生に、世話をしているために、やりたいけれどできないことについての調査結果では「特にない」が最も高くなっていますが、その他では、「自分の時間が取れない」 「友達と遊べない」が高くなっています。また、将来に向けて自分の進路を変更せざるを得ない、変更したとの回答が一定数みられています。

ヤングケアラーについてどの程度知っているか?
中高生では、「聞いたことはない」が8割以上を占め、「聞いたことがあり、内容も知っている」、「聞いたことはあるが、よく知らない」がどちらも1割未満でしたが、大学生では 「聞いたことはない」が38.4%で、「聞いたことがあり、内容も知っている」が46.5%と半数を占めていました。

自分がヤングケアラーにあてはまると思うか?
年齢が上がるにつれて、自分がヤングケアラーに当てはまると感じる子どもが増え、小学生では
「あてはまる」が1.8%であったのが大学生では7.8%となっていますが、約7割以上の子どもは「自分はヤングケアラーにあてはまらない」と答えています。

相談や話ができる相手の有無と相談の経験、相談相手
困りごとや悩み事について相談や話を聞いてくれる人がいるかの質問では、どの年齢でも「相談できる相手がいる」が50%以上で、中高校生では70%以上をしめていました。
一方、小中高校生では、相談や話をしたくないと答えた子どもが20%以上おり、家族の問題を相談することの難しさが窺えます。しかし、実際にケアについて相談した経験がある人は2割程度で、7~8割の人は「相談した経験がない」と答えています。また、実際に相談した相手は家族が最も多く7~8割、次に友人の4~5割です。
ケアについて相談した経験が「ない」と回答した中高生に、その理由について質問した結果では「誰かに相談するほどの悩みではない」が最も高く、次いで、「相談しても状況が変わるとは思わない」との回答が多く、悩みながらも自分で納得せざるを得ない状況が窺えます。


学校や大人に対して希望する支援(小学生)
学校や大人にしてもらいたいことの複数回答では、「特にない」が50.9%で最も多く、「自由に使える時間がほしい」、「勉強を教えてほしい」、「自分のことについて話を聞いてほしい」など、ケアを行っていく中で自分にも関心を払ってほしいと言う願いが感じられます。

大人や周囲に対して希望する支援(中高生)
ケアをしている家族が「いる」と回答した中高生に、学校や大人に助けてほしいこと、必要な支援についての複数回答の質問では、「特にない」が約4割で最も高く。それ以外では「自由に使える時間がほしい」「学校の勉強や受験勉強など学習のサポート」の支援の希望が多くみられています。

ヤングケアラーの調査から見えてきたもの
ヤングケアラーである子どもは1学級につき1~2人と思われ決して少なくありません。そして本人が自覚のないままに長時間家族の世話を行っていると、健康や学校生活、友人関係などに何らかの影響が認められることがあります。ヤングケアラーは家庭の中のデリケートな問題であり、支援が必要な状態であっても相談するのをためらうことがあり、本人や家族に自覚がなければ自らサポートを求めることは難しいことが多いと思われます。
一方、周りの人にヤングケアラーについての知識がないとたとえ支援が必要な子どもがいても気づくことができません。
まず、ヤングケアラーについて知ることが第一歩で、支援の必要性や緊急度が高いヤングケアラーを優先的に支援していく必要があります。優先度の高いヤングケアラーを見つけるためには、福祉、介護、医療、学校など子どものそばにいる関係機関が連携して早期に発見することが欠かせません。障害を持った家族に対しての介護福祉サービスが行き届き、子どものケアに頼らなくても家族が介護を行えるように福祉サービスを見直す必要があります。
さいごに
家族の中に障害を持った人やお年寄りがいることは大変なこともありますが、お互いに助け合うこと、感謝することによって絆が強くなっている家族もたくさんいらっしゃることを知っています。
しかし、誰か一人だけに、過度な負担がかかとすれば、それは望ましいことではありません。つらさや悩みを打ち明け相談できる周りの誰かが必要です。それはあなたであるかもしれません。
次回のコラムではヤングケアラーの課題と支援についてお話しできればと思います。

ではまた。 Byばぁばみちこ

