第六回 ヤングケアラー② 支援に求められるもの

ヤングケアラーには家庭のデリケートな問題が含まれており、支援が必要な状態であっても相談するのをためらうことがあり、また、本人や家族に自覚がなければ自ら支援を求めることは難しいと思われます。また、周りの人がヤングケアラーについての知識を持っていないと、たとえ支援が必要な子どもがいてもヤングケアラーと気づくことができません。
一般国民の意識調査
令和3年度の子ども・子育て支援推進調査研究事業「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」の中で一般国民のヤングケアラーの認知度や意識についてアンケート調査が行われています。
それによると、ヤングケアラーという言葉について「聞いたことがあり、内容も知っている」が29.8%、「聞いたことはあるが、よく知らない」が22.3%、「聞いたことはない」が48.0%であり、約半数が「聞いたことはない」という結果が得られています。
ヤングケアラーと思われる子どもがいた場合の対応は、「わからない」という回答が39.9%と最も多く、「本人に聞く」23.3%、「関係機関に相談する」22.1%となっています。「何もしない」という回答は16.2%で、「わからない」を合計すると約半数が対応に困っていることが分かります。
対応について「何もしない」と回答した理由では、「どのように対応したらよいか分からない」、「家庭の個人情報なので抵抗がある」、「相談する余裕がない」の3つに大きく分かれます。
この検討の中で、認知度が低いほど「何もしない」「わからない」という割合が多く、認知度が向上することがヤングケアラーの把握と相談、支援に結びつくと思われます。
相談しやすい環境づくりのためには、「相談する際の判断基準や手順がわかりやすいこと、24 時間いつでも相談が可能であるヤングケアラー専用の相談窓口があること、相談によってどのような支援が受けることができるか分かることが大切です。また、相談については、電話だけでなくメール・SNSでなど様々なツールが必要です。

ヤングケアラーに関する学校への調査結果
厚生労働省が令和2年度、3年度に行ったヤングケアラーの実態調査の際に学校でのヤングケアラーに関する実情と取り組みについての調査も同時に行いました。
学校のヤングケアラーについての知識と認識度
学校側がヤングケアラーについてどの程度知っているかについての調査結果では、知ってはいるが特別な対応を行っていないと答えた学校が最も多く、4~6割を占めています。知っていて対応を行っているのは小学校で4割、中学校2割、全日制高校では1割となっています。子どもの年齢が低いほど学校現場で子どもの変化に気づきやすく、対応を行っていることが考えられます。

ヤングケアラーと思われる生徒の存在
全ての学校で「いる」と言う回答が最も高く、定時制高校で70.4%、通信制高校で60.0%に及んでいます。また、ヤングケアラーの生徒がいる小学校では約3割、中学校から全日制高校では約4~5割と年齢が高くなるほどヤングケアラーと思われる生徒がいる率が高くなっています。

スクールソーシャルワーカー(SSW)の配置状態
全国の学校でいじめや不登校といった問題が年々増加し、その解決のためには社会福祉を含めた支援が必要であることから、2008年に文部科学省が「スクールソーシャルワーカー活用事業」を開始しました。スクールソーシャルワーカーはこどもたちが直面している問題を解決するために、関係機関や家庭と連携を行うコーディネーター的な役割を果たしています。スクールソーシャルワーカーの派遣については「要請に応じて派遣される」が最も多く、小学校、中学校、全日制高校では50%となっています。

スクールカウンセラー(SC)の配置状態
スクールソーシャルワーカーだけでなく、文部科学省は平成7年度から友人関係や親子関係など様々な相談に応じる「心の専門家」として臨床心理士などのスクールカウンセラーを全国の学校に配置できるように支援を行っていますが、人材の不足や財政状況等の理由によって各都道府県の活用状況は様々です。スクールカウンセラーは週に1回から月数回配置されている学校が大半です。

ヤングケアラーについて外部支援と連携して対応したケースの有無
要保護児童対策地域協議会は「子どもを守る地域のネットワーク」で、福祉の関係者が情報を交換し地域で支援が必要な児童の早期発見と適切な支援、増加している虐待の防止につなげることを目的に地方公共団体が運営しています。2004年度の児童福祉法の改正で法的な位置づけがなされました(第64回コラム 胎内から始まる母子支援-特定妊婦-を参照ください)。学校でヤングケアラーと思われる子どもが分かった時、地域の外部支援につないだケースの有無を尋ねた調査では、4~6割は学校内部で対応しているという結果でした。学校だけでなく、ヤングケアラーが生活する地域の場で支援している組織とのつながりがあればより有効な支援が期待されます。

校内で共有している子どものケース(複数回答)
学校の中でヤングケアラーかもしれないと情報を共有しているケースとて、8~9割を占めたのは学校を休みがち、遅刻や早退が多い、保健室で過ごすことが多いなどで、ケアに長時間をとられることによって、自分の時間が取れないだけでなく、睡眠時間が不足していることが要因であると思われます。また、ケアの中での心配事など精神的な不安定さがあるものと思われます。

ヤングケアラーの支援について重要だと思うこと
複数回答で答えたヤングケアラー支援に必要だと思うこととして、「教職員がヤングケアラーについて知ること」「子ども自身がヤングケアラーについて知ること」、そしてその上で「子どもが教員に相談しやすい関係をつくる」ことが大切であると答えています。

ヤングケアラーの現状と課題
令和2年度と令和3年度に行ったヤングケアラーに関する本人と通っている学校、国民一般への調査からヤングケアラーの支援に当たってはいくつかの課題があげられます。
➀ヤングケアラーについて知っている人が少ない
ヤングケアラーについて知らない人が中高生では8割以上、大学生では約4割を占め、学校調査では知ってはいるが特別な対応を行っていないと答えた学校が、4~6割で、国民一般では「聞いたことがあり内容も知っている」人は約3割でした。
ヤングケアラーについての知識がないと、たとえ支援が必要な子どもがいても本人や周囲の大人が気づくことができません。そのためには研修などを通じてヤングケアラーについて知識をもつことが大切です。
②ヤングケアラーは表面化しにくい問題であることを念頭に置く
ヤングケアラーは家庭の中のデリケートな問題で誰かに相談するほどの内容ではない、相談しても状況が変わるとは思えない、家族のことを知られたくない、偏見を持たれたくないなど支援が必要であっても相談するのをためらうことがあります。また、本人や家族に自覚がない状態では、自らサポートを求めることは難しいことも多く、本人のことを気にかけながらも、心を開くまで寄り添い、タイミングをみて話を聴くことが必要です。また、本人の意思を確認することなく、本人からの相談内容を家族に伝えることは原則的にしないなど、プライバシーへの配慮も必要です。
③支援の必要性や緊急度が高いヤングケアラーを優先的に支援
子どもは生活していく様々な場で小さなSOSを出しています。その中で、優先度の高いヤングケアラーを見つけるためには、福祉、介護、医療、学校など子どものそばにいる関係機関との連携による早期発見が欠かせません。
④子どものSOSに気づくための教育現場への支援
健康状態や「宿題ができていないことが多い」「遅刻や早退をする」などの学校での生活に支障を生じることが多く、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーを配置して「子どもの心への支援」を充実させる必要があります。
⑤支援の要となるヤングケアラー・コーディネーターの配置
ヤングケアラーは相談窓口が明確でなく、支援に結びつけるためのコーディネーターが必要です。支援団体や行政による悩み相談窓口、SNS等オンライン相談、当事者によるピアサポートなどが求められます。
⑥福祉サービスの見直し
介護が必要だったり、障害を持った家族に対しての介護福祉サービスが行き届き、子どものケアに頼らなくても家族が介護を行えるように福祉サービスを見直す必要があります。
子ども家庭庁によるヤングケアラー支援のための施策
子ども家庭庁はヤングケアラーの早期発見と支援につなぐため、福祉・介護・医療・教育など関係機関が連携したプロジェクトチームを立ち上げ、令和3年5月17日に取りまとめの報告を行いました。その結果、➀早期発見・把握、②支援策の推進、③社会的認知度の向上を今後取り組むべき施策と設定し、令和4年度から地方自治体で「ヤングケアラー支援体制強化事業」の取組を開始しました。しかし、実施主体や支援内容が地方自治体ごとにばらつきがあり、「子ども・若者育成支援推進法」を改正し、ヤングケアラーを国・地方公共団体等が各種支援に努めるべき対象として法制上明記し、それによって地域において要保護児童対策地域協議会と子ども・若者支援地域協議会が一緒に途切れることのない支援を行うために連携を図るよう努めるものとしました。

広島市での相談窓口
広島市では令和7年度からヤングケアラー専用の相談窓口を設置しています。
家族のケアがあって、自分の時間がなく「勉強したい」、「部活をしたい」、「友達と遊びたい」など、の相談に心理士などが応じ、自分の悩みを聞いてもらうことができます。
また、各区の地域支えあい課に設置されているこども家庭センターでも、家庭相談員などが18歳までのヤングケアラーに関する相談を行っています。

さいごに
ヤングケアラーへの支援は始まったばかりです。家族のケアを担っているすべての子どもが、ヤングケアラーに当たるとは限りませんが、ユニセフの子どもの権利条約ではこどもの持つ4つの権利が定められています(第六十回コラム -子どもの権利条約と子ども基本法-を参照ください)。「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」の4つです。
子どもは子どもらしく生きて育つ権利があります。
ヤングケアラーに対する途切れることのない支援のための連携が法制上明記されましたが、今後さらにヤングケアラーへの理解が進むことを願います。

ではまた。 Byばぁばみちこ

