第十二回 障害者総合支援法(5) 自立支援医療制度

自立支援医療制度は障害者総合支援法に基づいて医療費の自己負担を軽減する公的な制度です。医療費の自己負担の軽減によって必要な医療が受けやすくなり、継続的に長く通院しなければならない場合や服薬が必要な場合には経済的な負担を大きく減らすことができます。
3つの自立支援医療=精神通院医療・更生医療・育成医療
精神通院医療
精神疾患(てんかんを含む)の治療のために、指定の医療機関へ通院する場合の医療費を助成する制度です。精神科や心療内科への通院、デイケア、訪問看護などが対象ですが、入院した場合の医療費は対象となりません。
更生医療
18歳以上の身体障害者手帳を持っている人が、手術等の治療によって障害を取り除き軽減することによって、確実な治療効果が期待できる場合に医療費を助成する制度です。例えば、関節機能障害のある人に対する人工関節置換術、角膜混濁があり視力障碍のある人に対する角膜移植術などが対象となります。
育成医療
18歳未満で身体障害があり身体障害者手帳を持っている児童に対し、その障害を取り除き軽減することにより、将来社会生活で自立していくための効果が期待できる場合に医療費を助成する制度です。
例えば、先天性心疾患に対する治療、口唇口蓋裂に対する形成術、外耳奇形による難聴に対する外耳形成術などが対象となります。

精神通院医療
3つの自立支援医療の中で特に精神通院医療による支援制度は多くの方が利用されています
対象者となる人と適用範囲
何らかの精神疾患のために通院による治療を継続的に必要とする人です。対象となる精神疾患は「精神保健福祉法第5条」に定められています。
統合失調症、うつ病、双極性障害などの気分障害、パニック障害などの不安障害、薬物依存症、知的障害、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)などの発達障害、てんかん、高次脳機能障害 などの病気が対象となります。
制度の利用に障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)は必ずしも必要ではなく、医師が継続的な通院治療が必要と診断すれば対象となります。また、申請に当たってはそれまでの通院年数に関係なく、医師の診断があれば初診からでも申請が可能です。
利用できるのは指定された自立支援医療機関のみ
自立支援医療制度の利用ができるのは、都道府県または政令指定都市が指定した「指定自立支援医療機関」に限られます。
また、精神疾患の治療に関連するすべての医療費が対象になるわけではなく、適用対象となるものとならないものがあるので注意が必要です。
【適用対象となるもの】
精神疾患の治療のための通院:診察、検査、投薬などの医療費
デイケア:精神科デイケア、デイナイトケアなどの費用
訪問看護:精神科訪問看護の費用
てんかんの治療:精神科以外の科(脳神経外科など)でてんかんの治療を受ける場合の医療費
【適用対象とならないもの】
精神科病棟への入院医療費、精神疾患と関係のない病気やケガの治療費 、公的医療保険が適用されない治療や費用、保険適用外のカウンセリングなど

自立支援医療制度と他の助成制度の違い
自立支援医療制度は治療費を軽減することを目的としています。これに対し、障害者手帳や生活保護など他の助成制度は、医療費以外の生活全般や就労支援なども対象としています。
障害者手帳を持っていても、自立支援医療の申請がなければ医療費助成は受けられません。
また、既に他の公的助成制度(重度心身障害者医療費助成など)を利用している場合、重複して支給を受けられない場合もあり、 申請前には自治体の窓口や医療機関で確認することが必要です。
自己負担額
通常の健康保険では、医療費の自己負担はかかった医療費の3割(年齢や所得による)ですが、自立支援医療制度では自己負担は原則として1割にまで軽減されます。また、所得に応じた自己負担上限額が設けられており、自己負担上限月額は、受診者と同じ医療保険に加入している世帯の市町村民税の課税額に応じて区分されています。
「中間所得層1・2」および「一定所得以上」の区分のうち、統合失調症、うつ病、双極性障害など、特定の疾患に該当する場合や申請前の12ヶ月間で、高額療養費の支給を3回以上受けた場合には、重度で継続的な治療が必要と判断され、自己負担上限月額が軽減される経過的特例が設けられています。 この場合、「中間所得層1」は5,000円、「中間所得層2」は10,000円、「一定所得以上」でも20,000円の上限額が適用されます。

申請から自立支援医療受給者証交付までの流れ
1.居住地市区町村の障害福祉担当窓口で自立支援医療制度の説明を受け、申請書など申請に必要な書類を受け取ります。
2.主治医による診断書(自立支援医療用)の作成を依頼し、申請書や他の必要書類を揃えて窓口に提出します。
診断書は自立支援医療の申請用に作成されたものでなければ受理されないことが多く、発行日から3か月以内など有効期間が定められている場合があります。
3.審査:精神保健福祉センターにおいて精神通院医療の要否について判定を行います。
審査には通常1〜2ヶ月程度の時間が必要です。
4.自立支援医療受給者証と自己負担上限額管理票の交付
審査を通過し承認されると「自立支援医療受給者証」と該当者には「自己負担上限額管理票」が交付され郵送されます。助成の適用は受給者証の交付日以降となり、この時点から制度を利用して医療を受けることができます。
申請に必要な書類
➀自立支援医療制度申請書:市区町村の窓口で入手できます。
②診断書(自立支援医療・精神通院医療用)診断書の有効期間は作成日から3ヶ月以内
③健康保険証の写し
④世帯の所得状況が確認できる書類
⑤マイナンバー(個人番号)が確認できる書類:マイナンバーカードなど。
⑥印鑑
有効期間と更新手続きについて
自立支援医療受給者証の有効期間は、原則1年間と定められています。制度の利用を継続したい場合は更新手続きが必要です。更新は、有効期間が終了する3ヶ月前から申請することができます。有効期間が切れてしまうと、新規申請扱いとなり、承認されるまでの間は医療費が3割負担に戻ってしまいます。
転入申請を行う場合について
住所が変わった場合には、転入前に自立支援医療受給者証が他の市で交付された場合、新しい住所の福祉課障害福祉係(区保健センター)で申請をしていただく必要があります。

自立支援医療受給者証交付のデメリット
➀利用できる医療機関・薬局が限定されている。この制度は指定された医療機関・薬局でしか利用できません。転居や転院の際には、その都度、指定医療機関を変更する手続きが必要になります。
②申請や1年ごとの更新の手続きに手間がかかる
③受給者証が届くまで制度を利用できない。
④受診時に受給者証と上限額管理票の提示が必要
提示を忘れると1割負担が適用されず、いったん3割負担で支払い、後から手続きが必要になる場合があります。
広島市における精神障害者通院医療費補助制度について
広島市に住民票がある人は広島市精神障害者通院医療費補助条例に基づいて、自立支援医療(精神通院)適用後の自己負担分については、補助が適用となり、自己負担額は発生しません。
これは精神障害を持つ人が適正な医療を受けることによって社会復帰を促すことを目的とした制度です。この制度を利用できるのは、障害者総合支援法で定められている自立支援医療費の支給認定を受けている広島市内に現住所がある人です。
広島市各区の福祉課障害福祉係(区保健センター)に自立支援医療費(精神通院)支給認定兼補助申請書を提出し手続きを行ないます。自己負担となる医療費の全額、自立支援医療費において自己負担上限額(月額)が設定されている場合は、その金額を限度として、補助をしてもらうことができます。
さいごに
何らかの障害を持っており、長期にわたる通院や服薬などが必要な場合には、高額な医療費が必要となり、経済的な負担は大きくなります。医療費の助成を受けるには、自立支援医療受給者証が必要で、障害者手帳を持っていても、自立支援医療の申請を行なわなければ医療費の助成は受けることができません。申請手続きはやや面倒ですが、是非申請を忘れずに行ってください。また、広島市では自己負担分についても補助を受けることができます。ぜひ、利用してください。
不明な点は各区保健センターの障害福祉係で教えてもらえます。

ではまた。 Byばぁばみちこ

